建物と土地を一括で取得した場合

建物と土地を一括で取得した場合

こんにちわ。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しています税理士の清水です。
今回のコラムでは、「建物と土地を一括で取得した場合」についてご説明致します。

建物付土地を取得した場合や敷地権付区分所有建物(マンション)を購入した場合に、税務上、よく論点となる事項についてご説明させて頂きます。

売買金額の内訳(建物と土地の各金額)が記載されていない場合 

一棟の中古マンションやオーナーチェンジでワンルームマンションを購入した場合で、売買契約書には売買代金の総額のみが記載され、建物と土地の内訳金額が記載されていないときがあります。このような場合、自己使用で取得した場合と賃貸用で取得した場合とでは、取扱いが異なります。

自己使用で取得した場合

個人の方が自己使用で取得した場合には、将来的に売却する場合を除いて、自己で使用している間は、建物と土地の内訳金額を決定する必要はありません。

賃貸用で取得した場合

個人事業主の方が賃貸用に取得した場合には、売買金額の総額を建物の取得価額と土地の取得価額に割り振り、建物の取得価額は減価償却という方法で毎年の必要経費にすることが出来ます。一方、土地の取得価額については、その土地を売却するまでは費用として取り扱う事が出来ませんので、毎年の所得税のみを考えれば、建物の取得価額が大きい方が税務上有利となります。
また、建物の購入金額には消費税が含まれておりますので、消費税の申告を行っている個人事業主であれば、消費税の面からも、建物の取得価額が大きい方が有利となります。

それでは、売買金額の内訳が記載されていない場合、自らの判断によって、売買金額の総額を建物の取得価額と土地の取得価額に割り振ることが税務上認められているかというと、そうではありません。税務上の取扱いとしては、租税特別措置法通達35の2-9という税務署内の内部通達によって次の通り定められております

租税特別措置法通達35の2-9

(土地等と建物等を一括取得した場合の土地等の取得価額の区分)
土地等を建物等と一の契約により取得した場合における当該土地等の取得価額については、次によるものとする。

  1. 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されており、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該契約により明らかにされている当該土地等の価額による。
  2. 当該土地等及び建物等の価額が当事者間の契約において区分されていない場合であっても、例えば、当該土地等及び建物等が建設業者から取得したものであってその建設業者の帳簿書類に当該土地等及び建物等のそれぞれの価額が区分して記載されている等当該土地等及び建物等のそれぞれの価額がその取得先等において確認され、かつ、その区分された価額が当該土地等及び建物等の当該取得の時の価額としておおむね適正なものであるときは、当該確認された当該土地等の価額によることができる。
  3. 1及び2により難いときは、当該一括して取得した土地等及び建物等の当該取得の時における価額の比によりあん分して計算した当該土地等の金額を、当該土地等の取得価額とする。

つまり、内訳が不明な場合は、時価の比率で土地と建物の金額を按分してください、と記載されております。

では、実務的にどのように時価を計算するかという事をご説明致します。

実務上の取扱い

実務上、土地と建物の時価は下記のいずれかの方法により計算します。

按分法

建物と土地の固定資産税評価額を用いて、各々の金額に按分する方法
※平成21年4月24日裁決で固定資産税評価額による按分法は適正な方法と認められています。

直接法と差引法の折衷法

1.土地の時価(※1)を計算し、建物の時価は差額で求める
2.建物の時価(※2)を計算し、土地の時価は差額で求める
3.1,2で求めた2種類の土地の時価と建物の時価をそれぞれ合計し、その合計金額をそれぞれ2で除した金額が、税務上問題のない土地と建物の時価となります

※1 土地の時価は、国税庁が発表している路線価を基に相続税評価額を計算し、その計算された相続税評価額を0.8で割戻した金額
※2 建物の時価は、国税庁が発表している標準的な建築価額表を基に、構造・建築年・用途を確認し、当時の建築価額から経過年数に応じた減価償却費を控除した金額

EX:土地・建物を総額1,000万円で取得した場合

1の方法により求めた土地の時価800万円、建物の時価200万円
2の方法により求めた土地の時価900万円、建物の時価100万円

よって、税務上の適正な時価は、
土地の時価(800万円+900万円)÷2=850万円
建物の時価(200万円+100万円)÷2=150万円

となります。

 

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執筆日:平成28年11月7日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。

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