相続税の申告後に遺留分減殺請求があった場合

相続税の申告後に遺留分減殺請求があった場合

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水と申します。今回のコラムでは「相続税の申告後に遺留分減殺請求があった場合」についてご説明致します。
遺言により財産を取得した方が相続税の申告を行い、申告後に遺留分減殺請求を受けて財産の一部を渡した場合、その後の税務の取扱いはどうなるのかという疑問が生じます。
本コラムでは、「相続税の申告後に遺留分減殺請求があった場合」の税務の取扱いについてご説明させて頂きます。

遺留分減殺請求とは 

遺留分とは、相続人に最低限認められている相続分を言い、遺留分減殺請求とは、被相続人によって作成された遺言書の内容が特定の相続人の遺留分を侵害した内容である場合に、その相続人は自己の遺留分を確保する為、他の相続人に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求することを言います。
※民法の改正により、令和元年7月1日以降に発生した相続に関する遺留分の減殺請求は、物権的請求権から金銭請求権に変わりました。

遺留分減殺請求後の申告は義務ではない 

遺言内容に基づき相続税の申告を行っているという前提でご説明させて頂きますと、遺留分減殺請求により各相続人の財産取得額に異動が生じた場合であっても、その後、申告書を提出しなおす「義務」はありません。その理由としては、遺留分減殺請求により各相続人の財産取得額に異動が生じたとしても、それは各相続人の納税額に異動が生じるだけであって、被相続人の財産全体に対する納税額には異動が生じないからです。
なお、条文上は相続税法第32条に、遺留分減殺請求により返還すべき額が確定した日から4カ月以内に更正の請求をすることが「出来る」という規定があり、申告書の提出は義務ではなく、あくまで「出来る」規定となっています。

財産を渡した者が更正の請求をした場合 

期限後申告書又は修正申告書の提出

遺留分減殺請求により財産を渡した者が更正の請求を行った場合、新たに財産を取得した者は、期限後申告書又は修正申告書を提出することになります。なお、期限後申告書や修正申告書の提出期限は、法律上は明記がない為、実務上は、財産を渡した者が更正の請求をするのであれば、新たに財産を取得した者は、出来るだけ早めに期限後申告書又は修正申告書を提出することになります。
なお、これらの期限後申告書又は修正申告書の提出がない場合は、新たに財産を取得した者に対して、税務署長が更正又は決定を行うことになります。

延滞税等の取扱い

期限後申告書又は修正申告書の提出に伴い、新たに本税の納税が発生することになりますが、この納税に対する延滞税は免除されることになります。また、期限後申告に該当する場合には、原則的には、無申告加算税が課されますが、後発的事由に基づく正当な理由がある為、無申告加算税も免除されます。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

最終更新日:令和5年6月1日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。

その他の関連コラムはこちら