建物の取得価額が不明な不動産を売却した場合

建物の取得価額が不明な不動産を売却した場合

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「建物の取得価額が不明な不動産を売却した場合」についてご説明致します。

中古戸建住宅や中古マンションの購入時、売買契約書には土地・建物の内訳金額の記載がなく、総額のみが記載されていたという場合、その後、この中古戸建住宅や中古マンションを売却するときに土地と建物の取得価額をどのように按分すればよいのかという疑問が生じます。
本コラムでは、このような「建物の取得価額が不明な不動産を売却した場合」についてご説明させて頂きます。

譲渡所得の考え方 

譲渡所得の金額は、売却した資産の収入金額から、その売却した資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除した金額となり、算式で表すと下記となります。

譲渡所得 = 収入金額 - (資産の取得費 + 譲渡経費)

ここで注意して頂きたいのが、売却した資産が、時の経過によりその価値が減少する減価償却資産(代表的なものが建物)である場合には、譲渡所得の計算上、収入金額から控除される「資産の取得費」は、取得価額から所有期間に応じた減価償却費を控除した後の金額となります。
従って、土地は減価償却という概念がないため、当時の取得価額=「資産の取得費」となりますが、建物については、当時の取得価額から、所有期間に応じた減価償却費を控除した後の金額が「資産の取得費」となるため、土地と建物の内訳金額が不明な不動産を売却した場合には、減価償却費を算出する為に、それぞれの取得価額の按分作業が必要となります。

減価償却費 

前述のご説明の通り、売却した資産が減価償却資産である場合、所有期間に応じた減価償却費相当額を控除した残額が、「資産の取得費」となりますが、減価償却費は、その資産が業務用なのか、それとも非業務用なのかによって計算方法が異なります。

  • 業務用資産の場合 ⇒ 所得税法に規定する償却方法に基づき計算
  • 非業務用資産の場合 ⇒ 通常の耐用年数の1.5倍に相当する耐用年数を用いて旧定額法に準じて計算

建物の取得価額 

建物の減価償却費を計算するにあたって、土地と建物の各取得価額を算出する必要があり、その区分は次のような方法により行うことになります。

  1. 購入時の契約書等において土地と建物の価額が区分されており、その区分された価額が取得時の価額としておおむね適正なものである場合には、その価額によって計算を行います。
  2. 購入時の契約書等において土地と建物の価額が区分されておらず、建物に課税された消費税額の記載があるときは、その消費税額から逆算して建物の取得価額を計算します。
  3. 購入時の契約書等において建物と土地の価額が区分されておらず、建物に課税された消費税額の記載がないときは、建物と土地の取得時の時価の割合で区分することになります。

3のケースを採用するにあたって、実務的な簡便的な方法として、建物の取得価額を「標準的な建築価額表」に基づいて算出し、残額を土地の取得価額とする方法があります。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成29年5月8日
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