広大な宅地(500㎡以上)を相続した場合

広大な宅地(500㎡以上)を相続した場合

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「広大な宅地(500㎡以上)を相続した場合」についてご説明致します。

広大な宅地を相続した場合、その宅地の形状、道路づけ、建築基準法上の規制によっては、「広大地」という特殊な評価方法が採用され、宅地の評価額が大幅に下がり、相続税額もそれに伴って大幅に減額される場合があります。
ただし、この「広大地」の規定については、平成30年1月1日以後の相続、遺贈及び贈与について改正が入ることになりました。そして、その改正内容について、平成29年6月22日に、国税庁課税部資産評価企画官審理係から発表がありました。
本コラムでは、この「広大な宅地」について、改正前及び改正後の内容についてご説明させて頂きます。

改正前 

概要

次の1から4の全てに該当する宅地は「広大地」に該当し、評価額を大幅に減額することが出来ます。

  1. 大規模工場用地に該当しない事
  2. マンション適地に該当しない事
  3. 近隣の宅地面積と比較して面積が広大であること
  4. 開発行為をした場合に道路等の潰れ地が生じること

具体的にどのような宅地が広大地に該当するかご説明致しますと、住宅地であること、容積率が200%以下の地域であること、3大都市圏においては面積が500㎡以上であること、道路からの奥行距離が30m以上あること等の要件を満たす宅地が該当します。
上記に該当する土地を経済的に最も合理的な活用をしようとした場合、容積率が低い為にマンションを建てることは合理的と言えず、宅地分譲をしようとした場合、道路からの奥行距離が長い為に敷地延長(旗竿地とも言います)での区画割りが困難となり、結果として、開発道路を入れて区画割りをすることとなる為、潰れ地が生じ、広大地の要件を満たす宅地ということになります。

財産評価基本通達24-4(広大地の評価)

その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものの価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。

  1. その広大地が路線価地域に所在する場合
    その広大地の面する路線の路線価に、15(奥行価格補正)から20-5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額
    広大地補正率 = 0.6 - 0.05 × 広大地の地積 ÷ 1,000㎡
  2. その広大地が倍率地域に所在する場合
    その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額を14(路線価)に定める路線価として、上記1に準じて計算した金額

改正後 

概要

今回の改正で、今まで適用要件が曖昧であった「広大地」の規定自体が廃止され、500㎡以上の宅地は、「地積規模の大きな宅地」の規定により評価が行われることになりました。
「地積規模の大きな宅地」に該当するか否かの適用要件は、その宅地が、工業専用地域以外の市街化区域に所在し、その地域の容積率が400%(東京都の特別区は300%)以下であることと明確化されましたので、従前の「広大地」の規定の曖昧な適用要件ではなくなった為、納税者と課税庁との見解の相違から生じる税務訴訟などは発生しなくなるように思われます。
その反面、従前規定の「広大地」評価が適用されれば、大幅な減税効果がありましたが、今回の改正に伴い新設された「地積規模の大きな宅地」は、例えば、地積が600㎡程度である場合、通常評価の79%程度となる為、従前の規定で広大地評価の適用可能性が高かった納税者にとっては、大きな増税要因になる改正だと思います。

財産評価基本通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)

地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいい、次の1から3までのいずれかに該当するものを除く。以下本項において「地積規模の大きな宅地」という。)で14-2(地区)の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するものの価額は、15(奥行価格補正率)から前項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する。

  1. 市街化調整区域に所在する宅地
  2. 都市計画法第8条第1項第1号に規定する工業専用地域に所在する宅地
  3. 容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
    規模格差補正率 = (A × B + C) ÷ A × 0.8
    A:宅地の地積
    B:次表参照
    C:次表参照

三大都市圏に所在する宅地

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
500㎡以上1,000㎡未満0.9525
1,000㎡以上3,000㎡未満0.9075
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85225
5,000㎡以上0.80475

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成29年6月26日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。

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