不動産を負担付き贈与する際の注意点

不動産を負担付贈与する際の注意点

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「不動産を負担付贈与する際の注意点」についてご説明致します。

受贈者に一定の負担(例えば、借入金の返済など)を条件に行う贈与を負担付贈与といいます。不動産を負担付贈与した場合、税務上は様々な論点があり、場合によっては、不利益を被ることがありますので、不動産の負担付贈与を行う場合には、十分検討が必要となります。
本コラムでは、この「不動産を負担付贈与する際の注意点」についてご説明させて頂きます。

負担付贈与とは 

概要

負担付贈与とは、読んで字の如く、負担」を引き受けることを条件に「贈与」を受けることをいいます。例えば、借入金1億円の返済を条件に土地の贈与をする等が負担付贈与にあたります。

民法上の注意点

負担付贈与については、民法第553条に記載があります。その内容としては、一般的な贈与は片務契約(契約当事者の一方のみが債務を負う契約)に該当しますが、負担付贈与については、その性質上、贈与者側には財産の引渡し義務が、受贈者側には債務の履行義務が生じ、契約当事者の双方に義務が生じる為、双務契約に関する規定が準用されます。また、負担付贈与は、その性質上、売買と同じ効果もある為、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じ瑕疵担保責任を負うことになります(民法第551条2項)。

受贈者側の注意点 

時価を基準に贈与税を計算

不動産を贈与した場合、贈与税を計算する際の各資産の評価額は、相続税評価額を用いて計算することとなります。例えば、建物であれば、固定資産税評価額を基礎とし、土地であれば、路線価を基礎として、相続税評価額を算出します。ただし、負担付贈与の場合には、各資産の評価額は、相続税評価額を用いることは出来ず、通常の取引価格、つまり、時価を用いることになりますので、不動産の負担付贈与を受けた場合の贈与税の計算は下記となります。
贈与税 = (不動産の時価 - 負担額) × 贈与税の税率
繰り返しになりますが、不動産を負担付贈与により取得した場合の贈与税の計算は、相続税評価額ではなく、時価を用いて計算しますので、くれぐれも注意が必要となります。

贈与者側の注意点 

負担額での譲渡と考える

不動産を負担付贈与した場合、贈与者側は、その負担額を対価として、不動産を譲渡したと同じ経済的効果がありますので、下記のような場合には、贈与者側にも課税関係が発生しますので注意が必要となります。

EX

贈与財産:時価3,000万円(取得価額1,000万円)
負担額:2,000万円の借入返済

贈与者側の課税関係
譲渡所得税 = (2,000万円 - 1,000万円) × 所得税率
従って、贈与する土地の取得価額より、消滅する負担額の方が大きい場合には、譲渡益が発生することになりますので、譲渡所得税の申告及び納税が必要となります。

財産分与により住宅ローン付きで自宅を取得した場合 

前述の内容と少し話の内容が異なりますが、離婚に伴う財産分与で自宅を取得し、自宅の住宅ローンも引き継いだ場合には、居住要件やその他の要件を満たしていれば、住宅借入金等特別控除を受けることが出来ますので、財産分与で自宅と一緒に住宅ローンを引継いだ方は、確定申告時にローン控除の適用がないかどうか確認してください。

 

イナリ税理士事務所では、西東京市のみならず、近隣地域からのご相談を積極的にお受けしておりますので、相続・不動産税務、中小企業の税務会計に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆日:平成29年7月31日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい。

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