遺産分割協議のやり直し

遺産分割協議のやり直し

こんにちは。西東京市で相続・不動産税務専門の税理士事務所を開業しております税理士の清水です。今回のコラムでは、「遺産分割協議のやり直し」についてご説明致します。

本コラムでは、被相続人の財産について相続人全員が一度合意した遺産分割協議をやり直し、当初の分割方法とは異なる分割方法とした場合、民法上、相続税法上において、どのような取扱いになるのかをご説明させて頂きます。

原則的な取扱い 

民法上の取扱い

民法907条では、「共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる」と規定されております。つまり、民法上の取扱いとしては、相続人全員の合意があれば、いつでも、一度確定した遺産分割協議のやり直しをすることが出来ることとなります。

相続税法上の取扱い

民法上は前述のとおり、相続人全員の合意があれば遺産分割協議のやり直しをすることが出来るとなっておりますが、税法上の取扱いはどのようになるのでしょうか。
被相続人の財産が相続税の基礎控除額を超えている場合、相続人全員の合意により作成された遺産分割協議書の内容に則って、相続税の申告書を作成し、納税も済ませていると思います。このような場合で、相続税の申告書の提出後に、相続人全員の合意に基づく遺産分割協議のやり直しをした場合、どのような課税関係が生じるのでしょうか

遺産分割のやり直しは贈与に該当

相続税法基本通達19の2-8の但し書きにおいて、「共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再分配した場合には、その再分配により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する」と規定されております。
つまり、遺産分割協議により各相続人が一度取得した財産を、遺産分割のやり直しという形で他の相続人が取得したとしても、その他の相続人が取得した財産は、遺産分割により取得したものではなく、相続人から贈与により取得したものとして取り扱うことになるため、贈与税の課税関係が生じますので注意が必要となります。

当初の遺産分割協議が無効であった場合 

民法上の取扱い

最初に行われた遺産分割協議に瑕疵等があり無効となった場合には、遺産分割協議のやり直しが行われ、かつ、そのやり直しの遺産分割協議の効力は、相続開始時点に遡及して効果を有することとなります。なお、民法909条においても、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じる。ただし、第三者の権利を害することはできない」とあり、遺産分割のやり直しの効果が相続開始時まで遡及することが明文化されています。

相続税法上の取扱い

相続税法上の遺産分割のやり直しは、原則的には贈与に該当することはご説明させて頂きました。それでは、当初の遺産分割協議が無効であった場合の遺産分割のやり直しはどのような取扱いになるのでしょうか。
結論から申し上げますと、当初の遺産分割が適法に成立していない、つまり無効であった場合の遺産分割のやり直しは、贈与税等の問題は生じないこととなります。
ただし、当初の遺産分割が無効であるという判断においては、個々の事案ごとに判断をする必要がありますので、慎重に確認をする必要があります。

 

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執筆日:平成29年1月9日
※上記コラムの内容は執筆日現在の法令に基づいて記載されたものですので、その後の改正等により法律が変更されることがありますので、ご注意下さい

 

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